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青森地方裁判所 昭和26年(行)18号 判決

原告 川口新八郎

被告 青森県知事

一、主  文

訴外百石町農地委員会が昭和二十五年十一月十八日樹立した青森県上北郡百石町字向平拾番宅地参百七拾六坪の買収計画に対する原告の訴願につき被告が昭和二十六年三月二日なした裁決はこれを取消す。

訴訟費用は被告の負担とす。

二、事  実

原告訴訟代理人は主文同旨の判決を求めその請求原因として「主文第一項掲記の宅地は原告の所有に属するところ訴外百石町農地委員会は昭和二十五年十一月二十日これにつき訴外佐々木清助の申請に基ずき自作農創設特別措置法(以下自創法と略称する)第十五条による買収計画(以下本件買収計画と略称する)を樹立しその旨公告し且関係書類を同月二十日から同月二十九日まで縦覧に供した。原告は同月二十九日百石町農地委員会に対し右買収計画に対する異議を申立てたところ同委員会は同年十二月二十五日異議を却下したので原告は更に同月三十一日被告(当時青森県農地委員会以下同じ)に対し訴願を申立てたところ被告は昭和二十六年三月二日訴願相立たざる旨の裁決(以下本件裁決と略称する)をなし同裁決書は同月七日原告に送達された。しかしながら本件買収計画にはつぎの如き違法がある。即ち百石町農地委員会は昭和二十一年本件宅地を農地としてこれにつき買収計画を樹立したが原告の異議により昭和二十五年十一月十八日右買収計画を取消し改めて同月二十日本件買収計画を樹立したものである。従つて佐々木清助の買収申請は早くとも右取消の日である昭和二十五年十一月十八日以後であり佐々木清助が自創法によつて農地の売渡を受けたのは昭和二十二年七月二日であるから右買収申請は佐々木清助が農地の売渡を受けた日から壱年を経過した後になされ右申請に基ずく本件買収計画は自創法第十五条に違反している。加之原告は本件宅地を佐々木清助に賃貸したことはなくこの点においても本件買収計画は自創法第十五条に違反している。右の如く本件買収計画は違法なものとして取消すべきであるに拘らず本件買収計画を維持し原告の訴願を排斥した本件裁決は違法なものであるからその取消を求める。」旨陳述した。(立証省略)

被告訴訟代理人は本案前の答弁として「本件訴を却下する」との判決を求めその理由として「本件買収計画書類の縦覧期間は昭和二十五年十一月十九日から同月二十八日までの十日間でありこれに対し原告が百石町農地委員会に異議を申立てたのは同月二十九日であつて縦覧期間経過後であるから本訴は適法なる異議申立を経ない不適法なものである。」旨陳述し、本案につき「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め答弁として「原告の請求原因中本件買収計画樹立から原告の本訴提起に至るまでの経過が原告主張の如くであることは右計画樹立の日及びその関係書類の縦覧期間の点を除いてこれを認める。本件買収計画樹立の日は昭和二十五年十一月十八日でありその書類の縦覧期間は同月十九日から同月二十八日までである。佐々木清助の百石町農地委員会に対する本件宅地の買収申請は昭和二十五年五月二十日になされた、同人が自創法によつて農地の売渡を受けた日は昭和二十四年六月二十九日である。又佐々木清助は本件宅地を数十年前から使用貸借契約に基ずいて使用して来たものである。従つて本件買収計画には原告主張の如き違法の点はなく原告の訴願を排斥した被告の本件裁決は正当である。」旨陳述した。(立証省略)

三、理  由

先づ被告の本案前の抗弁につき按ずるに、その方式と趣旨により真正に成立した公文と認められる乙第一、二号証によれば百石町農地委員会は昭和二十五年十一月十八日本件買収計画を樹立し、その旨公告し、同月二十日から同月二十九日までその関係書類を縦覧に供した事実を認定することができる。而して原告が右農地委員会に本件買収計画に対する異議を申立てた日が昭和二十五年十一月二十九日であることは当事者間に争がない。しからば右異議申立は縦覧期間内になされており被告の抗弁はその理由なく採用し難い。よつて本案につき按ずるに、百石町農地委員会が佐々木清助の買収申請に基ずいて本件買収計画を樹立したことは当事者間に争がない。原告は佐々木清助が自創法によつて農地の売渡を受けた日は昭和二十二年七月二日で同人が右買収申請をなした日は早くとも昭和二十五年十一月十八日以後であるから右買収申請は期限後の申請である旨主張し被告は佐々木清助が自創法による農地の売渡を受けた日は昭和二十四年六月二十九日で同人が右買収申請をなした日は昭和二十五年五月二十日であるから右申請は期限内の申請である旨主張するので按ずるに、成立に争のない甲第一、二号証、乙第一号証、証人昆久米太郎の証言及び弁論の全趣旨を綜合すれば百石町農地委員会は昭和二十二年七月二日本件宅地を畑としてこれにつき買収計画を樹立したところ昭和二十五年八月二十三日原告から右土地は畑でなく建物の建在する宅地である旨の苦情を受けたため実地につき調査した結果原告の主張を認め同年十一月十八日農地としての右買収計画を取消し即日改めて宅地として本件買収計画を樹立した事実を認定することができる。右の事実に徴するときは原告が百石町農地委員会に苦情を申入れた昭和二十五年八月二十三日以前の昭和二十五年五月二十日(農地としての買収計画がなお存在していた当時)に佐々木清助が本件宅地の買収申請をなした旨の証人鈴木芳男の証言は遽に措信し難く乙第三号証の一の買収申請書の作成日附吻合していないものと思料され他に被告の主張を肯認するに足る証拠はない。却つて証人昆久米太郎の証言に徴するときは農地としての右買収計画が取消された後に佐々木清助から本件宅地の買収申請が提出された事実を認容することができる。然らば右申請は早くとも昭和二十五年十一月十八日以後であり佐々木清助が自創法による農地売渡を受けた日が被告主張の如く昭和二十四年六月二十九日であるとしてもなお右売渡の日から壱年経過後である。然らば本件買収計画は期限後の買収申請に基くものでこの点において自創法第十五条に違反すること明かであり本件買収計画を維持して原告の訴願を排斥した被告の本件裁決亦違法であり取消すべきである。以上により原告の本訴請求はその理由あるを以てこれを認容し訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 工藤健作 中田早苗 田倉整)

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